技能実習生のベトナム人男性(24)が、会社から十分な説明なしに東京電力福島第1原発事故の除染作業に従事させられていたことが14日、分かった。男性を支援する全統一労働組合が東京都内で記者会見し、明らかにした。
同組合などによると、男性は2015年9月、「建設機械・解体・土木」の技能実習生として来日し、同10月から盛岡市の建設会社に雇用された。
同月から16年3月、福島県郡山市で汚染土壌の入れ替え作業などに従事。契約書に「除染作業」の記載はなく、男性によると作業内容や放射能の危険性についての説明もなかった。
16年9~12月、避難指示区域だった同県川俣町で被災建物の解体工事に携わった。従事者には環境省から1日6600円の特別手当が支給されたが、男性に手渡されたのは2000円だけだった。
現場責任者に詳細を尋ねたが、「嫌なら国へ帰れ」と取り合ってもらえず、男性は17年11月に会社の寮を出て、同組合に相談した。会社は団体交渉で「マスクの着け方は指導した」「他の会社も技能実習生に行わせている」などと返答したという。
男性は「将来の健康を心配している」と話し、「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は「除染作業は、それに見合った労働基準で行うべきだ」と訴えた。(2018/03/14-19:36)
技能実習生として来日したベトナム人の男性(24)が14日、東京都内で記者会見し、東京電力福島第1原発事故後の除染作業に従事させられたと証言した。支援団体によると、実習生による除染が公になるのは初めて。実習制度は途上国への技術移転が目的とされ、法務省入国管理局などは同日、「(除染は)実習の趣旨にそぐわず認めていない」との見解を示した。
男性は2015年9月に来日し、同年10月~16年3月、福島県郡山市の除染に従事。実習先の岩手県内の建設会社との契約では「建設機械・解体・土木」の実習をするはずで、「来日前に除染の説明はなかった。(国が定める)被ばくに関する教育もなかった」としている。
男性は16年9~12月には避難指示区域だった福島県川俣町で国直轄の建物解体工事にも従事したが、日当と別に出る特別手当(当時6600円)は3分の1の2000円しか受け取れなかった。
男性は「危険な仕事だと知っていたら来なかった。健康への影響が心配だ。契約した通りの仕事を日本で続けたい」と話している。
実習先の建設会社代表は14日、毎日新聞の取材に「日本人と同じように除染の仕事に入れたが、ベトナムで面接時に除染をする可能性も話した。現場に入る前に他の労働者と一緒に教育も受けさせた。通訳はいなかったが分からなければ聞いてくれと伝えた」と話した。【林田七恵】
https://mainichi.jp/articles/20180315/k00/00m/040/082000c
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「知ってたら来日しなかった」除染のベトナム人
外国人技能実習制度で来日したベトナム人男性(24)が14日、国会内で記者会見し、2015~16年に福島県内で東京電力福島第一原発事故に伴う除染作業に従事していたことを明らかにした。
除染は実習制度の対象職種でなく、法務省は、雇い主側から事情を聞くなどして男性の実習内容について調査している。
男性や支援者によると、男性は15年9月、ほかのベトナム人男性2人とともに来日。3人は実習先の盛岡市の建設会社で建設機械の取り扱いを学ぶことになっていたが、翌10月から約5か月間、福島県郡山市で除染作業に従事していた。市街地で側溝の泥をかき出したり、土を入れ替えたりしていたという。
16年9月から約3か月間は、避難指示解除前の同県川俣町で住宅の解体作業に従事していた。男性は17年5月頃にインターネットで郡山市の実習が除染作業だったと知ったことや待遇面に不満があったことから、同年11月、建設会社の寮から逃亡した。男性は「事前に危険な作業をすると知っていたら来日しなかった。将来の健康が心配だ」と訴えている。
一方、実習先の建設会社の男性社長も取材に応じ、3人に除染作業をさせていたことを認めた。社長は、福島県での除染や解体を請け負うため、14年に建設会社を設立。働き手が集まらず、実習生に頼ったという。3人は同社にとって初めての実習生だった。実習生ごとに作成する義務がある実習計画には、除染について記載しなかったという。
社長は「面接で通訳から説明していたので本人は納得していると思っていた。除染も建設機械を使った作業に変わりなく、わざわざ実習計画には盛り込まなかった」と話した。残りの2人は現在も同社で働いているという。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000303/20180314-OYT1T50103.html