2018年9月5日に、第32回「県民健康調査」検討委員会が開催され、2018年6月30日時点での3巡目(新たに3例が悪性ないし悪性疑いと診断、2例が甲状腺がんと確定)と4巡目の結果が公表された。
1〜3巡目の一次・二次検査の結果概要、悪性ないし悪性疑いの人数・年齢・性分布、および各年度ごとの手術症例の人数などは、「参考資料2 甲状腺検査の状況」にまとめられている。
3巡目の結果
2016年5月1日から開始されている3巡目では、一次検査受診率が前回よりわずか0.3%増えて64.6%となり、結果判定率は5.8%増えて100.0%となった。1巡目と2巡目での受診率(それぞれ81.7%と71.0%)よりも低いことには変わりない。特に、検査年度4月1日時点での年齢が18歳以上の受診率は、前回より0.5%しか増えず、16.4%とかなり低いままである。
二次検査対象者は前回より115人増えて1482人となり、受診者数は110人(平成28年度対象市町村で17人、平成29年度対象市町村で93人)増えて913人になり、受診率は2.9%増えて61.6%となった。1巡目の二次検査受診率は92.9%、2巡目では84.1%だったので、かなり下がっていることになる。二次検査の結果確定数は、平成28年度対象市町村で30人増えて547人(94.5%)、平成29年度対象市町村で107人増えて279人(83.5%)と、全体的には826人となり、全体的な結果確定率は5.0%増えて90.5%になった。平成28年度対象市町村から2人、平成29年度対象市町村から8人の計10人が新たに細胞診を受診し、平成29年度対象市町村から3人(男性1人、女性2人)が悪性ないし悪性疑いと診断された。1人が浜通り、2人が会津地方の住民である。この3人の事故当時年齢は、男性が9歳で、女性が10歳と11歳である。3人とも、2巡目での判定結果はB判定だった。手術症例は2例増えて11例となった。
3巡目以降の二次検査実施状況は、市町村別ではなく地域別でしか公表されなくなっている。「別表5 地域別二次検査実施状況」によると、二次検査受診率は、避難区域等13市町村と中通りでは70%をやや超え、浜通りと会津地方では、前回よりそれぞれ8.1%と15.8%増えて41.3%と49.8%になった。今回発表された結果は、4月1日から6月30日までに集計されたものであるが、新学年開始直後のあわただしい時期よりも夏休み中の受診を選ぶ可能性もあると思われ、浜通りと会津地方での二次検査結果には、今後動きが見られると想定される。またこの別表によると、細胞診実施者10人中、6人が中通り、2人が浜通り、2人が会津地方の住民である。
2巡目の結果との比較表によると、2巡目を未受診だった15048人からB判定が92人出ている。B判定1482人のわずか6%であり、この中から悪性ないし悪性疑いが出ているのか不明ではあるが、もしそうであれば、新規受診による早期発見に繋がっていることが望まれる。
4巡目に関しては、これまで2018年5月1日から開始されているとされていたが、実際には2018年4月1日からの開始であることが説明された。一次検査対象者数は、3巡目よりも42818人減っているが、これは、25歳節目検査の対象者が除外されているからである。1993年度生まれの対象者(約22000人)は2018年度に、1994年度生まれの対象者(約22000人)は2019年度に節目検査を実施することになる。節目検査の結果は別途、計上される予定である。このように、節目検査対象者が除外されて行くにつれ、対象者はどんどんと減って行くことになる。
4巡目の一次検査は、対象者293850人中、受診者が16362人と、受診率はまだ5.6%である。まだ953人でしか結果が確定しておらず、8人がB判定となったが、二次検査は未実施である。
3巡目の結果との比較表によると、3巡目を未受診だった93人からB判定が2人出ている。
(注:前回検査との比較表における「前回検査」とは、前回検査での一次検査の結果であり、二次検査後の再判定が反映された結果ではない。)
***
現時点での結果
前回発表された集計外症例数も含む、現時点での結果をまとめた。
***
以下は、「参考資料2 甲状腺検査の状況」の4ページ目にも、まとめられている。
先行検査(1巡目)
悪性ないし悪性疑い 116人
手術症例 102人(良性結節 1人、甲状腺がん 101人:乳頭がん100人、低分化がん1人)
未手術症例 14人
本格検査(2巡目)
悪性ないし悪性疑い 71人(前回から変化なし)
手術症例 52人(甲状腺がん 52人:乳頭がん 51人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例 19人
本格検査(3巡目)
悪性ないし悪性疑い 15人(前回から3人増)
手術症例 11人(前回から2人増)(甲状腺がん 11人:乳頭がん11人)
未手術症例 4人
合計
悪性ないし悪性疑い 202人(良性結節を除くと201人)
手術症例 165人(良性結節 1人と甲状腺がん 164人:乳頭がん 162人、低分化がん 1人、その他の甲状腺がん**1人)
未手術症例 37人
(**「その他の甲状腺がん」とは、2015年11月に出版された甲状腺癌取り扱い規約第7版内で、「その他の甲状腺がん」と分類されている甲状腺がんのひとつであり、福島県立医科大学の大津留氏の検討委員会中の発言によると、低分化がんでも未分化がんでもなく、分化がんではあり、放射線の影響が考えられるタイプの甲状腺がんではない、とのこと。)
***
2巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された71人の1巡目での判定結果
A1判定:33人(エコー検査で何も見つからなかった)
A2判定:32人(結節 7人、のう胞25人)
B判定: 5人(すべて結節、とのこと。先行検査では最低2人が細胞診をしている)
先行検査未受診:1人
3巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された15人の2巡目での判定結果
A1判定:2人
A2判定:6人(結節2人、のう胞4人)
B判定:4人
2巡目未受診:3人
***************************************************************************
他施設での手術症例について
今回の検討委員会では、「手術の適応症例について」の訂正報告で、2016年3月末時点での手術症例132例(1巡目102例、2巡目30例)のうち、福島医大以外での手術症例が6例と報告されていたけど、2015年には7例だったことについて、実際には7例であると報告された。
背景を説明すると、2015年8月30日に開催された第20回検討委員会で鈴木眞一氏が提出した資料「手術の適応症例について」では、2015年3月31日時点での手術症例104例(1巡目99例、2巡目5例)のうち、7例が他施設での手術症例とされていた。しかし、2016年9月末の国際専門家会議で鈴木眞一氏が出した臨床データでは、132例中6例が医大以外での手術例とされていた。(注:この臨床データについての2016年10月の記事での筆者の解説では、それまでの7例から6例に減っていることに言及している。)2017年11月30日に新メンバーで再開された甲状腺検査評価部会では、2016年9月に公表された鈴木眞一氏の発表データが日本語に直され、「手術の適応症例」として資料にされていた。
福島県立医科大学の甲状腺・内分泌センター長である横谷氏の説明によると、2016年3月31時点での手術症例132例のうち、医大での手術症例が126例だとされていたのは、実は2016年4月に入ってからの手術例1例が含まれていたために間違いであり、3月31日時点での医大での手術症例は132例中125例で、他施設での手術症例は、2015年と同じく7例であるということだった。訂正資料では、スライド3の数字を2016年3月31日時点のものとして調整し、医大での手術例を126例から125例、うち甲状腺がん124例と訂正し、スライド4「福島県立医科大学における甲状腺がん125例の特徴」には、「2012年8月から2016年4月までの甲状腺がん手術症例」という注釈が追加されている。
この125例の特徴については、データが公表された国際専門家会議の内容をまとめた英語書籍 "Thyroid Cancer and Nuclear Accidents"(山下俊一 & Gerry Thomas編集)にも収録されている。さいわい、その書籍での内容は、上記の集計ミスには影響されていないが、現場にいる本人が、国際会議での発表にあたり、データの整合性を取っていないことは驚きである。
この他施設での手術症例7例については、甲状腺検査部門長の志村氏から口頭で追加情報が出されたが、その内容は、1巡目に関しては、知り得た範囲で医大以外の症例を含めて手術症例を報告しており、他施設での手術症例7例を含めたが、それ以降は、「研究倫理や個人情報保護に関する社会の考え方を反映し、他施設での手術症例は含んでいない」ということだった。さらに、記者会見でのおしどりマコ氏の質問の答えから、2巡目以降の他施設での手術症例を、福島医大は把握していないということが明らかになった。これは、現時点で悪性ないし悪性疑いとされた202人中、手術を受けていない37人が、仮に他施設で手術を受けて甲状腺がんと確定されていたとしても、その結果が公式発表には反映されていない可能性を示唆している。
また前回、「甲状腺検査集計外症例の調査結果の速報」として2017年6月30日時点での集計外症例が公表されたが、その報告の確定版および更新について、アワプラネットTVの白石草氏から質問があった。驚くべきことに、「速報」としておきながら、実質、その報告が最終版とみなされており、2017年6月30日以降の集計外症例を把握する予定もないことが明らかになった。
http://fukushimavoice2.blogspot.com/2018/09/201895.html
0 件のコメント:
コメントを投稿