2014年5月5日月曜日

年間100ミリシーベルト以下の被曝でも発がんリスクが高いことは原爆症認定訴訟の判決で決着がついている


年間100ミリシーベルト以下の放射線の発がんリスクが高いことは原爆症認定訴訟の判決で決着がついている

2011年10月25日 | 内部被曝の恐怖

放射線よりもタバコの方が発がんリスクが高いという俗説がありますが、これは国立がん研究センターが流している情報を元にしています。
がん研究センターの持っているニコチンやタール、アルコールなどについてのデータは、当然ですが、身体の内部に取り入れた場合の発がん率です。これについては、国立がん研究センター自身が何十年も研究してきた成果であり、信用がおけます。
ところが、がん研究センターが基礎にしている放射線データは、がん研究センター自身のデータではなく、しかも、外部被曝(放射性物質が身体の外にあって被曝する場合)しか考慮していないなど非常に問題があるデータなのです。
つまり、比較の対象が違うから、放射線の発がんリスクが矮小化されてしまうのです。


「発癌物質は数多く、プルトニウムと同じぐらい有害な物質はタバコなどいくらでもある」
という人もいるのですが、これは身体の外にあるプルトニウムとニコチンを体内に取り入れた場合とを比べているのです。この人もプルトニウムを飲んでみる勇気はないと思います(苦笑)。
放射線による外部被曝と比べるなら、むしろ、酒やタバコを人の身体の横に置いて、その人ががんになるかどうかと比べなきゃいけません(爆)。
0,000・・・1%くらい増えますかね。
そういうコアな原発推進派は、低線量放射線「療法」まで勧めたりしますから始末に負えません。


独立行政法人国立がん研究センター(旧国立がんセンター)は半世紀近くにわたり、日本のガン治療と研究の中心的役割を果たしてきたというべき組織ですが、こ のセンター運営の実権を握っているのは、最高責任者の総長や病院長ではなく、厚労省から出向している役人たちです。
特に厚労省指定席である運営局長(普通 の病院の事務長に相当する)は、序列的にも総長に次ぐポジションとされ、病院長より格上に置かれています。
総長をはじめセンター幹部の人事権は厚労省に握られているため、センター職員は運営局長の意向に逆らえないと言われています。逆に運営局長は本省の威光をたよりに絶大な権限をふるいます。
もちろん、独立行政法人として、厚労省の天下り先にもなっています。差配できるがん研究費は90億円に及び、厚労省官僚の利権にもなっています。
というわけで、もうおわかりですね。その国立がん研究センターが、やたら放射線の影響だけ矮小化する目的が。
厚生労働省の意を受けての歪曲なわけです。

ちなみに、国立がんセンターは薬害イレッサ訴訟(被告は厚生労働省)の和解に関しても、横から口を出して弁護団から厳重抗議を受けています。これも厚労省の意向を受けたちょっかいだったのでしょう。
国立がん研究センターが、喫煙・飲酒の発がんリスクを強調するのは大いに結構。また、野菜不足や運動不足で発がんリスクが上がると一生懸命説くのも素晴らしい。
しかし、放射線の影響を矮小化して、それを真に受けた市民が被害を受けても責任がとれるのでしょうか。


さて、国際放射線防護委員会(ICRP)は累積100ミリシーベルトを超えるとがんになる確率が0.5%増えるが、年間100ミリシーベルト以下の放射線を被曝しても発がんリスクが増えるかどうかは不明であるとしています。
原発推進派は、さらにこのICRPの見解さえ、放射線の影響を過大評価していると言います。
しかし、実際には、この見解は低線量放射線による内部被曝を著しく過小評価したものです。

ICRPが見解の根拠にしているデータは、国立がんセンターが基礎データとして使用する調査と実は共通しています。
それは、戦争直後にアメリカ占領軍によって作られたABCCと、それからできた日米共同出資の財団法人放射線影響研究所による「広島長崎の被爆者12万人の調査」です。
これは広島・長崎への原爆投下で大量の放射線を浴びたが生き残った約9万4千人と、「そうでない」約2万7千人の健康状態を比較対照して、1950年から半世紀にわたり追跡したものです。
これは放射線被曝についての世界で唯一と言ってもいいほどの疫学データですが、この調査はすでに原爆症認定訴訟判決(被告は国・厚生労働省)で何度も何度も裁判所から問題点を指摘されているのです。
だからこそ、原爆症集団認定訴訟では、原告被爆者が被告厚労省に対して、行政訴訟としては空前の19連勝も達成出来ました(以前には最高裁でも原爆松谷訴訟で勝っています)。
 
(被爆医師肥田舜太郎先生の法廷での証言は判決にも引用された)


たとえば、私も立ち上げから関わった近畿原爆症集団認定訴訟大阪高裁判決(原告被爆者勝訴で確定)では、放射線影響研究所による「広島長崎の被爆者10万人の調査」とそれを基礎に作られたICRPの基準そのものについて、以下のように問題点を指摘しています。

 「1審被告ら(国と厚労省のこと)は,ICRPによって世界的基準とされている事実をもって,DS86が世界的に承認されたシステムであり,何ら問題がないと主張するが,ICRPは,後に大きな欠陥があったとされるT65Dをリスク決定の基本資料として利用し,世界的に推奨していた時代もあり,現時点で他に有力な評価システムがなく,相応の合理性を有しているという以上にICRPが採用していることを過大評価することは相当でない。」
これは、ICRPが基礎にしたDS86などのコンピューターでの計算が、広島・長崎の原爆から出る初期放射線について、最高まで2・5キロメートルまでしか飛ばないという想定でシミレーションをしているのですが、これ自体が実証的に誤りとされていると言うことです。


「内部比較法によって,非被爆者(対照群)のリスクを推定する場合,被曝線量が過少評価された低線量被爆者が対照群に含まれる危険性が生じ,その結果,特に低線量被爆者について,被曝線量当たりの過剰リスクが検出されなかったり,低く算出される可能性が生じる。」
これは、「10万人調査」が、放射線が2・5キロしか飛ばないという間違った知識を前提に、「被曝した者」とは、爆心地から2・5キロメートル以内の「近距離被爆者」だと設定し、「遠距離」被爆者と、原爆投下後に爆心地に入った入市被爆者を「非曝露群」として比較の対象にしているのですが、それでは、高線量外部被曝者と低線量外部被曝者という被曝者同士を比べてしまっているので、放射線被曝によるリスクが算出されない可能性があると言っているのです。
これが、この調査、ひいてはICRPやそれを受けた国立がん研究センターの1番致命的な問題ですね。放射線の影響は決定的に低めに出てしまいます。


「また,死亡率調査において,死因について相当の誤差があり,その誤差を修正すると,固形がんのERR(過剰相対リスク)推定値が約12%,EAR(過剰絶対リスク)推定値が約16%上昇することが示唆されており,放射線によるリスクが過小評価されている可能性が否定できない。」
これは、たとえ被曝した人が放射線により発症したがんが発症して亡くなっていても、死亡診断書などには、たとえば「心不全」と書かれることも多く、死亡率調査自体が信用できないという、これもまた根本的な問題です。
これでさらに放射線の影響は低めに出てしまいます。


「さらに,ABCCによる寿命調査開始(昭和25年)までの多数の死者が対象とされていないことにより,高線量被爆者の可能性の高い死亡者を排除することによって,高線量被爆者のリスクが低く算定され,その結果,低線量被爆者についても低いリスクが与えられるおそれを否定できない。」
これは、読んで字のごとしで、1番放射線の影響を受けた人が調査の対象から外れていますから、放射線の影響は非常に少なめに出てしまうのです。


「内部被曝を全く考慮しない審査の方針には疑問があるといわざるを得ない。
さらに,低線量放射線による継続的被曝が高線量放射線の短時間被曝よりも深刻な障害を引き起こす可能性について指摘する科学文献も存在している上,放影研の充実性腫瘍発生率に関する1958~1994年のデータを使用し,爆心地から3000m以内で,主として0~0.5Svの範囲の線量を被曝した被爆者の充実性腫瘍(固形がん)の発生率を解析したところ,0~0.1Sv(100ミリシーベルト)の範囲でも統計的に有意なリスクが存在し,あり得るどのしきい値についても,その信頼限界の上限は0.06Sv(60ミリシーベルト)と算定されたとする文献も存在しているのであって,これらの科学的知見や解析結果を一概に無視することもできない。」
大阪高裁は、この調査とそれに基づく基準が内部被曝を考慮していないという根本的な欠陥がある事に疑問を呈しています。
そして、0~100ミリシーベルトの被曝でも意味のあるリスクが存在するとか、しきい値(これ未満だと影響がゼロである)が認められる疾病でもそのしきい値は60ミリシーベルトだという文献もあり、それは無視できないということです。
全国の地裁・高裁が同じ論理で、厚労省の主張を一蹴し、原告被爆者の勝訴判決を言い渡してきました。
放射線の被曝が喫煙や受動喫煙と同じなどと言う俗説は、すでに日本の司法で否定され尽くしているのです。


また、ICRP自身自らの基準の修正を余儀なくされています。
「現在の科学的知見では、100mSv以下でも健康被害があるというのが、正確な表現であり、100mSv以下の健康被害が不明だというのは、ごまかし」
まして、100ミリシーベルト以下では、健康被害が不明どころか「ない」と言い切ってしまう原発推進派の主張はICRPの結論を全く変えてしまっており、噴飯ものです。
そもそも、ICRPも国連の組織ではなく、またIAEA(国際原子力機関)と同じく、国際的な原発推進組織です。だから、一緒になって、チェルノブイリ原発事故での死者は数十人しかいないというようなデマを流し続けています。
そのICRPよりさらに放射線の影響を過小評価するような日本の原発推進派の言説は、言語道断といえるでしょう。

IAEA(国際原子力機関)は原発推進組織 福島原発事故の問題点の調査報告書で脱原発を決して言わない

しかも、福島原発から放出した放射性物質では半減期30年のセシウム137が圧倒的に多く、6月まででも広島型原爆の168倍でした(その後も出続けている)。
そして、その22%は日本列島の陸地に落ちました。それらはずっと今も放射線を出し続けています。
フクシマのヒバクシャの被害がどれくらい広がるのが今はまだ見当も付かないのです。

福島原発事故でセシウム137が広島型原爆の168倍放出 うち22%が陸地に落ちた=原爆37発分


 http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/2cee0b9f12a2ea7ca58f4a2bc94df78a

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