2016年10月30日日曜日

台湾が2025年までに原発ゼロを閣議決定


 「原発ゼロを目指すに当たっての問いは、『再生エネで原発を置き換えることが出来るかどうか』というものではない。放射性廃棄物の問題を子孫に残さないために、どのような政策が必要なのかということこそを考えるべきなのだ」

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台湾が原発全廃へ 福島第一事故受け、25年までに停止
 台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権が2025年に「原発ゼロ」にすることを決め、行政院(内閣)は、再生エネルギー事業への民間参画を促す電気事業法の改正案を閣議決定した。太陽光と風力発電を中心に再生エネの割合を20%まで高めることを目指す。東日本大震災後の反原発の民意を受けたもので、改正案は近く立法院(国会)で審議に入り、年内の可決を目指す。
 世界的にはドイツが2022年までの原発全廃を決めるなど、欧州を中心に脱原発の動きがある。一方、増える電力需要に応えるため中国やインドが原発を増設させており、アジアでは台湾の取り組みは珍しい。
 改正案は20日に閣議決定され、6~9年かけて発送電分離も行う。蔡総統は「改正は原発ゼロを進め、電源構成を転換する決意を示すもの」としている。
 台湾では原発が発電容量の14・1%(15年)を占め、現在は第一~第三原発で計3基が稼働中。だが、東京電力福島第一原発の事故で台湾でも反原発の世論が高まり、原発ゼロを公約に5月に就任した蔡氏が政策のかじを切った。台湾も日本と同様に地震が多い。稼働中の全原発は25年までに40年の稼働期間満了となる。同法改正案では25年までに全原発停止と明記し、期間延長の道を閉ざす。

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台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権が「原発ゼロ」にかじを切った。全原発が稼働を終え原発ゼロとなるまでの時間は9年しかなく、電力の安定供給や計画の現実性への疑問もある。それでも、東日本大震災を機に高まった反原発の世論を背に、政権をあげて推進する構えだ。
 
 台湾の第一、第二原発は人口密集地ログイン前の続きの台湾北部にあり、台北中心部から20キロほどの距離にある。近くに第四原発の建設も進んでいたが、福島第一原発事故で安全性への不安が高まり、反対運動が激化。第四原発の稼働を目指していた馬英九(マーインチウ)・前政権は2014年に凍結決定に追い込まれた。
 原発ゼロへの課題は多い。馬政権当時は稼働予定だった第四原発の発電量だけに限っても、再生エネで補うのは困難、との見方を示していた。第一原発1号機、第二原発2号機が不具合で停止する中、冷房の電力需要で電力がひっぱくする事態も生じている。
 当局は太陽光発電の拡大で25年までの投資額が1兆2千億台湾ドル(約4兆円)となり、10万人の就業機会を創出すると見込むが、基本的には民間頼みだ。発電事業を手がける中興電工機械の江義福会長は「消費者の省エネの取り組み、企業の意欲、当局の優遇策があって初めて実現可能性が出てくる」と話す。
 工業界からは「電力を自由化すれば電気料金が上がり、経営負担になるのでは」との不安の声も出ており、台湾企業の競争力を守るためにも電気料金の高騰を抑えることも必要だ。
 (台北=鵜飼啓)
 ■東日本大震災機に民意が転換 李世光・経済相に聞く
 台湾で電力問題を所管する李世光・経済部長(経済相)に原発ゼロを目指す背景などを聞いた。
 ――なぜ原発ゼロを目指すのですか
 「原発をめぐる台湾の民意は東日本大震災を機に大きな転換があった。政権交代での最大の変化は、25年までに既存の原発をすべて停止させる一方で再生エネルギーを推進し、原発ゼロとすることを明確な目標に掲げたことだ」
 「政権としての政策を明確にすることで、関係省庁が関連の政策を推進することができる。政策に揺るぎがないということが分かれば投資も生まれ、大きな変化につながる」
 ――時間が迫っています
 「政策をはっきり打ち出す前は、全体の14%を占める原発の発電量をどう補うのかとか、電源の安定性はどうかといった議論が出て『再生エネへの転換は難しい』となってしまっていた。放射性廃棄物の処理問題も『そのうち考えよう』と先送りしていた。こうした考えこそが再生エネの『敵』なのだ」
 ――どう変えますか
 「太陽光発電は技術的にも成熟してきた。パネルは生産過剰で価格が下がっており、台湾には逆にチャンスだ。台湾海峡は強い季節風が吹き、風力も有望だ。ただ、台湾には自己技術がない。日本との協力にも期待している」
 「再生エネは安定したベースロード電源とは言えないが、違う種類の再生エネを組み合わせることでベースロード電源に近いものにし、蓄電や節電にも力を入れていく」
 ――現実的な目標ですか
 「原発ゼロを目指すに当たっての問いは、『再生エネで原発を置き換えることが出来るかどうか』というものではない。放射性廃棄物の問題を子孫に残さないために、どのような政策が必要なのかということこそを考えるべきなのだ」
 (聞き手・鵜飼啓)

http://www.asahi.com/articles/ASJBQ5Q7SJBQUHBI014.html
http://digital.asahi.com/articles/photo/AS20161023000190.html

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