2016年11月7日月曜日

偽装請負、福島第一原発、外国人の労働実態。

廃炉 外国人に偽装請負か 事前教育も不十分

汚染水貯蔵タンク建設の契約形態
 

東京電力福島第1原発の汚染水対策で2014年、違法な偽装請負が疑われるかたちで複数の外国人が働いていたことが、関係者への取材で分かった。法令に基づく事前の放射線防護教育も作業員は十分に受けていなかったという。事故後の第1原発で外国人の労働実態が明らかになるのは初めて。【関谷俊介】
 第1原発では当時、汚染水問題が切迫し、東電は漏れにくい溶接型貯蔵タンクの建設を大手ゼネコンに発注。2次下請けの東京の溶接会社で「必要な日本人がそろわなかった」(社長)ため、7人前後の外国人溶接工が急きょ集められた。
 集めた日系ブラジル人の溶接工、石川剛ホーニーさん(43)らによると、石川さんは溶接会社から1基200万円で建設を受注。作業員と個別に業務請負契約を結んで溶接を頼んだ。石川さんは途中で現場を離れ、その後は溶接会社などが作業を指示した。雇わずに業務を請け負わせ、発注者以外の指示で作業するのは、安全管理責任などをあいまいにする偽装請負として職業安定法などが禁じている。
 溶接会社の社長は「社員でないと第1原発に入れず、上の会社に(外国人を)社員と報告したが、請負の方が効率が上がる」と話し、偽装の意図はなかったと釈明している。
 石川さんらによると外国人作業員は主にブラジル国籍で、14年3~5月ごろに建設に従事。多くは日本語の読み書きが不自由で、片言で会話する人もいた。
 原子力施設で働く作業員は核燃料や放射線について事前に教わり、試験に合格する必要がある。テキストや試験は日本語で、言葉に堪能な石川さんが横で試験の答えを教え、合格した作業員もいた。石川さんは「汚染水対策を急ぐ中で暗黙の了解があった」と話す。
 こうした労働実態について東電は取材に、個別の状況には言及せず、事前教育については「外国籍の方には英語のテキストを用いたり、雇用主が通訳をつけたりしている」とした。石川さんによると、外国人作業員の母語は主にポルトガル語で、通訳はなく、自分が代わりを務めたという。

東電は、安全の管理に責任を

 第1原発の汚染水対策で、外国人作業員の立場は会社から賃金をもらう労働者ではなく、3次下請けの溶接工からさらに仕事を請け負う個人事業主だった。いわば「4次下請け」として最下部で働き、彼らの教育や安全管理について責任の所在はあやふやだった。
 彼らは高い放射線を浴びることはなかったという。請負の方が努力に応じて報酬も増え、工事も進み、元請けや東京電力も救われたはずだ。だが、十分な教育を受けられない中で事故や健康被害に遭ったら、誰が責任を持つのか。原発での日本人作業員の偽装請負では、2012年に福岡県警などが摘発した例があり、国が電力各社に適正な請負を要請した経緯がある。
 今後数十年続く廃炉作業では、溶け落ちた核燃料の取り出しなど困難な課題が待ち受ける。日本人が集まらず、外国人が急場しのぎで穴を埋める局面も予想される。しかし、第1原発で働く外国人について、東電は取材に「人数は答えられない。(立ち入り時に)在留資格は把握していない。作業員対象のアンケートで特段の問題は確認していない」と説明する。廃炉作業を主導する東電が、彼らの労働環境や資格を把握し、教育や健康管理について責任を持つ体制を整えるべきではないか。【関谷俊介】
http://mainichi.jp/articles/20161107/k00/00m/040/138000c

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