2014年5月7日水曜日

「知足」 消費を減らす



まずはエネルギー消費の抑制にこそ目を向けなければなりません。


 いったい、私たちはどれほどのものに囲まれて生きれば幸せといえるのでしょうか。
人工衛星から夜の地球を見てみると、
日本は不夜城のごとく煌々と夜の闇に浮かび上がります。
建物に入ろうとすれば自動ドアが開き、人々は階段ではなくエスカレーターやエレベーターに群がります。
冷房をきかせて、夏だというのに長袖のスーツで働きます。
そして、電気をふんだんに投入して作られる野菜や果物が、
季節感のなくなった食卓を彩ります。

日本を含め「先進国」と自称している国々の人間が、
生きることに関係のないエネルギーを膨大に消費する一方で、
生きるために必要最低限のエネルギーすら使えない人々も存在しています。
 
 残念ではありますが、人間とは愚かにも欲深い生き物のようです。
豊かさや便利さを追い求めながら、
地球温暖化、大気・海洋汚染、森林破壊、酸性雨、砂漠化、産業・生活廃棄物、
環境ホルモン、放射能汚染、さらには貧困、戦争など、
多くの“人災”を引き起こして地球の生命環境を破壊しています。
種としての人類が生き延びることに価値があるかどうかは、私には分かりません。
 
 しかし、もし安全な地球環境を子どもや孫に引き渡したいのであれば、
その道はただ一つ。

「知足」しかありません。

代替エネルギーを開発することも大事ですが。
まずはエネルギー消費の抑制にこそ目を向けなければなりません。

 一度手に入れてしまった贅沢な生活を棄てるには、苦痛が伴う場合もあるでしょう。
これまで当然とされてきた浪費社会の価値観を変えるには長い時間がかかります。
 しかし、世界全体が持続的に平和に暮らす道がそれしかないとすれば、
私たちが人類としての新たな叡智を手に入れる以外にありません。

                  (小出裕章『原発のウソ』扶桑社新書)
 

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